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Cafetalk Tutor's Column

Keisuke.H 講師のコラム

I was a bocchi.②

2024年3月22日

最古の記憶は保育園だった。
次の記憶は一体いつなのだろうか?

幼い私は空を飛ぶことに憧れていた。
一瞬ではなくずっと飛んでいたかった。
滑り台から飛び降りたり、窓から飛び降りたりはしなかった。
高いところは怖かったし、
落ちるのは飛ぶということに含まれない。
当時住んでいた家は団地の3階。
窓から飛び降りたら痛いというのは想像でわかっていた。

父のイカヒコーキがきっかけなのだろうか。
紙飛行機に夢中になった。
紙は買ってもらえなかったので新聞のチラシを使って。
毎日毎日紙飛行機を折っては飛ばして遊ぶ。
ただ、部屋の中だけでは飛ばす距離に限界があった。
ある日窓から紙飛行機を飛ばした。
その日から家の窓は紙飛行機の発射場になった。

毎日窓から飛ばし続けた。
母にはその度に怒られた。
私は機体の回収をしなかったからだ。
何回怒られても懲りなかった。
何か明確な目的があったわけではない。
絵や文字や文章は一切書いてない。
純粋に紙飛行機を作って飛ばすのが大好きだった。

一番覚えているのはシトシトと雨が降る暗い日。
その日も紙飛行機を作っていた。
この雨じゃ飛ばないだろうと思った。
でも、好奇心には勝てずに数機折って窓から飛ばした。
そのうちの一機はゆらゆらと遠くまで飛んでいった。
どこまで飛んでいったのか見えなくなるほど。
『よく飛んだ!』
満足感と達成感に満ち溢れたが、
誰も共感してくれなかった。

その日以降も窓から飛ばし続けたが、
それ以上の飛距離は出せなかった。
そのうちに、あの記録はもう出せないと感じて悲しくなった。
悲しくなって飛ばすのをやめた。

空は遠くなった。

本コラムは、講師個人の立場で掲載されたものです。
コラムに記載されている意見は、講師個人のものであり、カフェトークを代表する見解ではありません。

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