恥じらいと瑞々しさ。若さのキーワードです!

Rie_Takayama

写真は、ルネッサンス時代のイタリアの画家ボッティチェリが描いた名画、「ヴィーナスの誕生」。フィレンツェにあるイタリア最大の美術館と言われるウフィツィ美術館に所蔵されています。

日本帰国前のある日、普段は入り口前につねに長蛇の列が出来ていてなかなか足が向かなかったここへ、チケットを事前予約して行ってきました。同時期に同様のテーマで描かれた「プリマヴェーラ(春)」とあわせ、この絵見たさに訪れる人もたくさんいるので、実際の作品の前はやはり人だかり。

それでも、この絵を目にした私は、一瞬息を飲んで、鳥肌が立ちました。

作品全体の色彩や構成の美しさもさることながら、絵の中のヴィーナスそのものの美しさに、なんとも言えない感動を覚えたのです。2年前にフィレンツェを旅行で訪れた際にもここには来ているのでそのときも目にしたはずなのですが、1年イタリアに滞在したあとで見たこの絵は、イタリアで認識される女性美や若さというものが以前よりは自分の中ではっきり理解できるようになった私にとって、よりしっくり、そして大きな衝撃をもって迫ってきました。

恥じらいを含んだ瞳としぐさ。同時に、エネルギーのほとばしりを感じる瑞々しさ。まさに生まれたての生き物すべてがもつ共通の何かが、この絵では見事に表現されています。そして、これは若い女性がもつ究極の美としてもとらえることができます。

日本では「美魔女ブーム」がいまだ健在のようですが、海外からこの様子を見ていると、少し違和感を感じることもあります。というのは、外見をいかに若く見せるか?に注力するあまり、人として、女性としての成熟やそこからもたらされる魅力の厚み、のようなものが軽視されているようにも見えるからです。コンテストの最終審査に残る女性たちは皆独自の美容法をもち、そこにかける努力と時間は賞賛に値します。でも、逆に考えると、それをやっている時間があまりに長いと、その時間で人生のもっと他のことを楽しめるのではないか?とも思えてなりません。なぜなら、成熟している女性なら、彼女たちの人生で大切にしていることはきっと他にもたくさんあって、たとえばそれは家族との何気ない時間や会話、ひとりで読書したり映画を観たりするひととき、情熱を傾け社会とかかわる活動、日々うつろう季節や自然の美しさにハッとするとき・・・・などなど、たくさんあると思うからです。

女性の若さや美しさがそれだけで賞賛されるのは世界どこでも、イタリアでも同じです。そしてこのボッティチェリの絵に表現されている美は、まさに若い女性だからこそのもの。年齢とともに失われ、移ろいゆくものだからこそ美しいのかもしれません。

ただ、イタリアには宗教的な影響もあってか、女性の成熟美や母性を崇めるカルチャーもあり、ある程度の年齢を経た女性がいつまでも自分の美容にばかりエネルギーや時間を費やし、20代の若さで見られたいとすることには、幼稚さと滑稽さという違和感を感じるというのはあります。そして、イタリアの男性たちは年齢を重ねた、いわゆる中年の域に達した貫禄ある女性たちには若い女性以上の敬意を払い、一般的にとても大切に扱います。それは自分の母親に対する愛情とも重なるからかもしれないですね。日本ではよく「マザコン」と呼ばれますが、イタリアではマンマが大好きな男性に対して日本ほど悪いイメージはないです^^。

さて、それでも女性としていつまでも若々しくいたい、と思うのは自然で世界共通、イタリアの女性に至っても同じだと思います。ただ、イタリアに限らず、ヨーロッパで魅力的な女性というのは、外見の若さというよりはむしろ内面の若さ、かわいらしさ、それらをいくつになっても忘れない気持ちが自然に表情やしぐさに表れている女性たちが多いように思います。その内面の若々しさに直結するものを、このボッティチェリの絵に見つけた気がして、鳥肌モノの感動の正体は「恥じらいと瑞々しさ」だと気づきました。そしてこの、若い女性なら誰もがもつ特徴は、心のもちようによってはいくつになっても内面に持ち続けることができるもの、ではないでしょうか?

自分がいつも正しいわけではないという一瞬の迷い。もしかしたら他の、別の考え方があるかもしれない。世界には自分が知らないことがまだたくさんあるのだという少しの不安と謙虚な視点。そして同時に存在する好奇心。心躍る気持ち。まだ見ぬことがらへの強い興味や憧れ。

年齢を重ねることで得られる自信や知識、教養と同時に、これらの気持ちをいつも忘れないでいること。その組み合わせが、女性をつねに魅力的で若々しい存在に見せるのではないか?そう思えた美術館でのひとときでした。たとえ目じりに皺ができていても、少し白髪まじりでも、魅力的な女性はその瞳に彼女の魅力の秘密を宿しているものです。そしてもちろん、この内面の若さの秘密は男性にも共通するものだと思います✰

日本に帰国しております!しばらくはスケジュールが不定期に変更となる可能性があると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします★

This column was published by the author in their personal capacity.
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