演奏するとき、何が大切でしょうか?
これは何のために演奏するか、という問いでもあります。
こんなに速く弾けます!こんなこともできます!
というのはヴィルトゥオーゾピースではとても大切です。
でも、音楽の全てがそうではありません。
うーん。
では、派手なテクニック以外で必要なものはなんなのでしょうか。
正確な音程、正確な音価、正確なリズム、濁りのない発音…
これは派手なテクニックの基本ですね。
それじゃあ…伸びやかで煌びやかなヴィヴラート…美しい音色?
みなさんはどんな要素をイメージされましたか?
実のところ、美しい音色とは、ヴァイオリンを正しく鳴らすだけでは不十分で、
その曲のその音にふさわしい質感が伴わないといけません。
では動画を見てみましょう。
(例として、ドイツ民謡/山の音楽家、シューマン/詩人の恋〜冒頭を弾いてみました)
先の問いで、音楽性という言葉を想起された人もいるかもしれません。
では音楽性ってなんでしょうか?
たとえば、次の音が連想できる、というのはとても大切です。
これは音楽性、音楽的、という言葉にまとめられる一つの能力です。
(詳しく知りたい方は、R.シューマンの「音楽の座右銘」を読みましょう)
では、なぜ次の音が連想できるのでしょうか。
沢山聴いて、沢山弾く中で不協和音とその解決や、転調による浮揚感、気持ちの高揚などを感じとる。
それらの体験が経験値になるからでしょう。
基本的に音楽は言語の一種です。
それも、時代、文化圏によって異なります。
変わらない要素もありますが、すべての曲の楽譜で同じ読み方が適用できるとはいえません。
(この辺りの話は、アーノンクール著「古楽とは何か」に詳しく書いてあります)
ただし、その表現を楽器でどう行うか、というのは現代の楽器を使う限り、現代の楽器のテクニックです。
そこで、どのパートを弾くにせよ、欠かすことができないのが「音の質感」だと思います。
どんな楽器も、人間の語り口、歌声が基本だと考えます。
歌のメロディを楽器で弾く時...人の声の発音、アクセント、息継ぎ、イントネーション...
イメージしている声の質感をトレースして身につけていく技術。
これは楽器の物理的な理解、身体の運動の整理、楽器との一体感がないとできません。
話がすごく長くなりました。周辺領域に種まきをしすぎましたが(汗)、
自分の演奏にただ楽譜通りの正確さを求めず、言葉、歌としての理想を念頭に置きたいなぁ、と思います。