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Cafetalk Tutor's Column

Rubrica di Rie_Takayama

言語を学ぶ(教える)楽しさと難しさ Vol. 3~自分の言葉で話そう

Jan 30, 2016

イタリアに行く前、通算約10年ほど秘書をしていました。いずれも小さいけれど外資系の日本オフィスの社長付きで計3社、日本人、フランス人、オーストリア(オーストラリアではありません^^;)人の社長たちの秘書をしました。秘書というと、細かいところにまでよく気がついてかゆいところに手が届く機転と、上司の望むことであればどんな雑用でも引き受け、すべて完璧にこなす黒子的な資質が求められるとイメージする人は多いと思います。実は私、本来の自分の性格で言うなら、すべてあてはまっていません(汗)。そして、自分には向いていないと真剣に悩んだ時期もありました。

ですので、恐らく私は秘書的な秘書ではなかったのですが、それもあり、元上司やその周辺の社員の方々にはいろいろと迷惑もかけ、また振り返ると反省するようなこともたくさんありました。そして、いろいろと自分としてもストレスを抱えて大変な時期はあったのですが、今思うとこの秘書をやった10年くらいの間に自分という人間を大きな幅で育てて頂いたと思っています。

小さな外資系オフィスの秘書ですので、結構いろいろなことをやらなくてはならず、その範囲は人事、総務、経理に及び、場合によってはIT系のことまで担当にさせられたことも。一緒に仕事をする人たちも、東京で一緒に働く日本チーム社員のほかに、同じグループ会社のアジア支社や本社(私の場合はアメリカ、フランス、オーストリア)の社員たち、契約しているベンダーと呼ばれる業者の営業さんや、人材紹介会社、ホテル、エアライン会社、大使館などなど・・・いろいろな業種の方々とお付き合いさせていただきました。そして、社長の周辺には本社のエグゼクティブたちが常に連絡を取り合い、時には日本訪問ということもありますので、そんなときは本社の役員たちの日本滞在アレンジをしたり、会議の資料をやりとりしたりもします。

私は先に述べました通り、必ずしも秘書に向いていないと自分を分析しているのですが、仕事というのはたとえ好きでなかったり向いていない場合でも、やれば何かしら学び得ることは多いものです。そして、私の場合は、英語という仕事で使う言葉の上達はもちろんのこと、相手の立場や状況に応じた適切な対応のしかただったり、ときには社長の代わりに交渉することもあったりして、コミュニケーションという意味で学んだことは本当に大きかったです。

私は実は現在、久しぶりに英語を使う仕事をしています(本当にやりたい仕事とは別ですが、夢の実現のために)。派遣ですし、情報管理の厳しい業界ですので詳細は言えないのですが、アメリカが本社の医療系の会社でアシスタント兼社内通訳をしています。1年間イタリアにいた後ですので、いきなり英語をがっつり使う仕事で大丈夫か?!と自分でもドキドキだったのですが・・・始めてみたら脳みそも身体の動きも?かつての秘書だった頃の記憶がよみがえってきたように、意外になんとかなっている感じです・・・・(まだこれからどうなるかわかりませんが!)。

さて、そんな私の英語、自分で分析するに、もしかしてかなり自分流なのかもしれません。何をもって英語の上手、下手を決めるのかはいろいろな考えや諸説ありますのでわかりませんが、ひととおり整理してみると、こんな感じです;

文法や言い回し:長期間どこかの英語圏で学んだというのではなく、日本での学校教育とオーストラリアで2か月間語学学校に通った以外、あとはほぼ独学ですが、実はこの部分は結構基礎ができていると思っています。というのは、英語圏などにいると、どうしても伝える必要性から、また現地の口語表現などの影響もあり、意外に「ブロークン」になることってあると思います。でも、日本にいるとどうしても文法には意識が行きますよね?!あとは、仕事をしながら身に付いた部分は本当に多く、いわゆる「きちんとした英語」を使う必要があることから、その意味では身体で覚えた感じがしています。

発音とアクセント:日本で手に入る英語教材はアメリカ英語の影響が大きかった時代ですので、少しアメリカよりだと思います。でも、オーストラリアにいたこともありますし、また非英語圏の人たちとの接触も多々あったことから、実は相手によって変わります。アメリカ人や英語圏の人たちと話すときはより「英語圏の英語」らしく。アジア人やヨーロッパの英語を母国語とせず、あまり英語が上手ではない人と話すときは、相手が理解しやすいように自然にゆっくりと、はっきりと発音するので、日本語のアクセントが出やすくなります。

読み書き:これも仕事でかなり鍛えられました。一時早く読むスキルを鍛えたくて、英字新聞をとっていて読んでいたことがあります。時事英語の中には難しいものがたくさんあったりしますが、目で読んでその綴りから意味を推測することは、この英字新聞速読の練習でかなり鍛えられました。そして、フランス語やイタリア語などのラテン語から来ている単語もたくさんあるので、これらラテン言語を勉強するときにも、綴りが似ていると意味も近い、ということで言葉の理解にとても役立っているように思います。また、正しく綴れることは英語を母国語とする人にとっても大切なことですが、これも、非英語圏の者としてはまぁまぁOKだと思っています。正しい綴りを覚えるにも、新聞やジャーナルを読むことがとてもいいエクササイズになると思います。

スラングなどの口語表現:英語圏に長期間住んだことがない者としては、ここは弱いです。そして、出回っているものでも下手に使わないようにしています。というのは、このような口語表現は、生活の中で生まれてきたものなので、頭で理解するだけでなく、使う場面と感覚がよく理解できて初めて身に付くものだと思うので。また、その土地特有の表現も多いので、私が現在まで英語を使ってきた相手(本当に多国籍)には、あまり必要ではありませんでした。

と、こんな感じですので、私の英語はいわゆる帰国子女の人のようなネイティブ英語とは違うと思っています。でも、それでいいとも思っていて、というのは、たとえばヨーロッパでドイツ人やフランス人、ベルギー人などの英語が母国語ではない人たちと話すときに、ネイティブ英語である必要はないですし、逆にネイティブ英語って何?!という感じなのです。彼らにとってはイギリス英語がイメージしやすいネイティブ英語なので、そこでたとえばアメリカのスラングを連発したり、アメリカの発音や言い回しで「ネイティブぶる」ことはむしろやめたほうがいいからです。もちろん、アメリカに近い国、南米などの人にとってはその逆になるのでしょうが、いずれにしても、私の意見では、英語圏で生まれ育って自然に身に付いたものでない限り、無理にどこかの英語圏の英語をネイティブぶって話す人になる必要はないのではないか、と思います。

それよりも英語やその他外国語を話すときにいちばん大切なこと。それは、自分の言葉でしっかりと話せるようになることではないでしょうか。それは、日本語で自分をきちんと表現することとまったく同じだとも思います。自分がどんな人間で、何を伝えたいのか。言葉遣いも、普段からくずれた日本語を使う人は外国語もそのようになるでしょうし、相手によってきちんとした言葉を選んで、洗練された言い回しも身に着けたいと思う人は、日本語で話すときもそのように話していると思うのです。そして、言葉を覚えていくときには、まずは表現したいものがあってこそ、それを伝える道具として必要に迫られて身に付いていくと思うので、やはり表現者である自分がコミュニケーションをする相手に開かれていること、はとても大切だと思います。

英語を使って何をしたいか?ただ話せるだけではダメだ、という意見もあるなかで、私が思うには自分を表現して様々な国の人と繫がりたい、それだけでも十分な意味ある動機づけだと思っています!でもその代り、その話す内容が相手を惹きつけるものなのか、相手を納得させられるか?という点は表現の方法は違っても、人間心理という意味では日本語のときとまったく変わらないと思いますので、英語を学びながら自分を育て、様々な人とコミュニケーションがとれる魅力的な人間になる、ということを目指すのもいいのではないかと思います。

秘書時代に英語でも日本語でも鍛えられたこと。それは自分の言葉で相手に挑むこと。相手がたとえ社長であっても、社長が見えていないところで伝えなくてはいけないことがあればそれを伝える。ときには社長の方針に意見してしまったこともありました。でも、その伝え方ひとつで相手の反応もまったく違ってくることを学んだのは、とても良い経験だったと思います。言葉は大切ですね!文法も発音も大変ですが、きちんと伝えられること、を意識して学んでみると違ってくるのかもしれません。

写真は数年前会社員時代の仕事帰り、夜桜と働いていた六本木のビルを見上げて撮りました。この景色をみると、あの頃の気持ちが蘇ってくるから不思議です。

This column was published by the author in their personal capacity.
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